第1回 見える&つなぐ!ヤマハのネットワーク レビュー&レポート
進化を止めなかったヤマハネットワーク製品の最新地点を探る
ヤマハのネットワーク製品はなぜ30年間も愛されてきたのか? Interop 2025でその答えがわかった
提供: ヤマハ
ヤマハのネットワーク製品がいよいよ30周年を迎えた。ISDN時代に国産ルーターとして登場したRT100iを始祖に持つヤマハのネットワーク製品は、ブロードバンドやクラウドの時代を経て、今なお多くのユーザーから熱い支持を受けている。
なぜヤマハのネットワーク製品は30年間も愛され続けてきたのか? ヤマハのネットワークの最新地点はどこか? 先頃開催されたネットワークの祭典「Interop Tokyo 2025」のブースでヤマハの志村侑汰氏に話を聞いた。
クラウドサービスをますます快適にする「RTX840」
Interop Tokyo 2025におけるヤマハの展示ブースでまず目に付いたのは、5月に発表されたばかりの「RTX840」だ。30周年を迎えたヤマハルーターの本流とも言える最新機種で、クラウド利用をより最適化するための強化が施されている。
ポイントはローカルブレイクアウトの利用を容易にした点だ。拠点間をVPNでつないだ企業ネットワークでは、インターネット上のクラウドサービスを利用する際も、必ず本社やデータセンターを経由してしまう。これに対してローカルブレイクアウトを利用すると、拠点側のルーターからクラウドサービスを直接利用することが可能になる。VPNを経由しないため、レスポンスも向上し、本社やデータセンター側の処理負荷も軽減できる。
ヤマハのルーターは以前からこのローカルブレイクアウトに対応していたが、今回ヤマハ側でクラウドサービスのIPアドレスやFQDNリストの配信サーバーを用意し、Microsoft 365やWindows Update、Google系サービスといった主要なクラウドサービスの通信先を自動更新できるようにしている。そのため、ユーザーはRTX840で短いコマンドで必要なクラウドサービスを指定すれば、ローカルブレイクアウトをより簡単に利用できるようになる。
クラウドサービスの利用が増えると、拠点側のルーターにも相応の性能が必要になってくる。これに対してRTX840では、RTX830に比べて4倍のメモリを搭載。ハードウェアも強化し、NATおよび動的フィルターの最大セッション数も6万5534から15万へ、TCPコネクション処理性能も約30%向上させた。SaaSやWeb会議など普段使いのクラウドサービスの利用を快適にするスペック強化と言えるだろう。
クラウドサービスの利用増を見越して、セキュリティも強化されている。RTX840ではIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が提供するセキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(通称:JC-STAR)レベル1への適合を予定している。外部機関によるラベル付与で安心して利用できるルーターを目指す。
スペックや機能が大幅強化されているRTX840だが、筐体、対応回線、インターフェイスは従来モデルのRTX830と同一。これは従来機種との互換性を確保するためだ。ヤマハの志村侑汰氏は、「RTX830や、その前のRTX810をお使いのお客さまもまだまだ多い。RTX840では、既存の設定ファイルをそのまま利用できるので、機種のリプレースでも安心してお使いいただけます」と語る。既存ユーザーを置き去りにしないのは、ヤマハの製品コンセプトの1つでもある。
小規模なオフィスに必要な機能を全部盛りした「NWR100」
続いて無線LANルーターの新製品「NWR100」のプロトタイプだ。ヤマハのネットワーク製品としてはかなり久しぶりの無線LANルーターで、2002年発売のRTW65i以来。「小さなオフィスにこれ1台」という謳い文句の通り、小規模なネットワークで必要な機能をコンパクトにまとめている。
LANポート×4、WANポート×1を搭載したコンパクトな白色筐体に、ルーター、無線LANアクセスポイント、セキュリティなどの機能を凝縮。スループットは2Gbpsで、IPsecによるリモートアクセスVPNもサポート。Wi-Fi 6対応で、2.4GHz帯で30台、5GHz帯で30台の計60台までの端末接続が可能。これなら小規模オフィスで十分なスペックだ。
スペックだけではなく、使い勝手も小規模オフィスや店舗を想定しており、操作や設定はGUIで可能になっている。トラブルシューティングを容易に行なえる「ウェルネスモニター」を初搭載する。ウェルネスモニターは、従来のヤマハルーターで評価が高い「ダッシュボード機能」と、無線LANアクセスポイントに搭載されている「無線LAN見える化ツール」を継承・進化させた機能だ。「特に無線ネットワークのトラブルは、問題の切り分け等が困難で解決までに時間がかかることが多く、ネットワークのダウンタイムが長い傾向にありますが、『ウェルネスモニター』を用いることで問題の早期解決を実現可能です」と志村氏は語る。
Wi-Fi 6対応の無線LANアクセスポイントに関しては、端末の移動時にも速やかに別の無線LANアクセスポイントにつなぐためのローミング機能がアピールされていた。もともとヤマハは、「適応型ローミングアシスト」と呼ばれる機能を搭載しており、移動したことで電波強度が弱くなった端末(スティッキー端末)を無線LANアクセスポイント側から切断し、最適な無線LANアクセスポイントにつなぎ直せるようになっていた。
これに加え2025年1月にはファームウェアでIEEE 802.11k/v/rという標準ローミングプロトコルをサポート。11kで周囲の無線環境の情報をやりとりし、11vで別の無線LANアクセスポイントへのローミングを提案。11rで再接続に必要な暗号鍵の生成プロセスを簡略化し、高速なローミングを実現する。
ローミング時の切断時間を抑える高速ローミングが可能になると、たとえば介護施設や医療現場での内線やナースコールのような通話システムでも、途切れのない音声通話が可能になる。現場の声を製品に取り込んでいくのは、ヤマハならではの取り組みと言える。
10Gbps超のネットワークを支える大容量伝送と管理機能
ハードウェアの新機種としてはスイッチ4機種もプロトタイプとして展示された。全機種ダウンリンクで全ポート10Gbps、アップリンクで同社としては初めて25/100Gbpsまで対応する。
L2スイッチは、インテリジェントスイッチの「SWX2320-30MC」、PoE対応インテリジェントスイッチ「SWX2322P-30MC」の2機種。L3スイッチはカッパーポート(RJ-45)の「SWX3220-30MC」と、ファイバーポート(SFP)の「SWX3220-30TCs」の2機種で、初めて電源の冗長化に対応。PoE対応のSWX2322P-30MCは720Wの給電能力を持つため、無線LANアクセスポイントのバックエンドとしても十分だ。
新スイッチのコンセプトはずばり大容量化だ。10Gbpsスイッチが増え、Wi-Fi 6・7の登場で無線LANの伝送速度も上がっているため、スイッチの大容量化は喫緊の課題。志村氏は、「多数の10Gbpsポートを揃えたい、大容量のアップリンクを使いたいというお客さまに向けた製品です」とのことで、アップリンク用のファイバーケーブルまで提供されるという。高精度な時刻同期を実現するPTPv2 BCにも対応しており、ShowNetのMedia over IP企画でも一足早く活躍していた。
ヤマハネットワーク製品の統合管理を実現するYNO(Yamaha Network Organizer)も最新版が披露された。YNOはクラウド経由で拠点の機器の管理・分析を可能にするサービス。ヤマハのネットワーク製品に搭載されたYNOエージェントが、機器の情報をクラウド側にアップロードするので、ネットワーク管理者はWebブラウザからYNOのサイトにアクセスするだけで、機器の設定や管理が行なえる。
機能的には、接続されている機器のGUIにログインできる「GUI Forwarder」のほか、CONFIGの管理や復元、ファームウェアの一括更新、ゼロコンフィグでの機器の導入、異常の一元把握、ログの分析など多彩な機能を持つ。多拠点で利用しているユーザーにとっては必須のサービスと言えるだろう。
今までYNOからLANを管理する場合は、ヤマハルーター経由で管理するコンセプトで提供されてきたが、今回披露されたのは現在開発中のYNOのスイッチ管理機能。 「ヤマハのスイッチがYNOに対応することで、今後はヤマハルーターが設置されていない環境でも、YNOから直接スイッチの管理が可能になります。さらに、スイッチのLANマップと組み合わせることで、その配下のLAN全体、端末の接続状況含めて管理ができるようになります」(志村氏)。YNO自体もユーザーごとの権限管理やAPI提供などの機能強化が行なわれており、着実に進化している様が見て取れる。